『故きを温ねて新しきを知る。以て師となるべし』 (論語為政篇)
『将来に対する最上の予見は、過去を省みることである』 (米の政治家:ジョン・シャーマン)
『私は過去によるほか将来のことを判断する道を知らない』 (米:パトリック・ヘンリー)
『将来に関する予言者の最善なるものは過去である』 (パイロン)
『歴史は例証からなる哲学である』 (ギリシャの歴史家:D・ハリカルナッセウス)
干支の干というのは「幹」であり、したがって根であり、支は「枝」であり、それから引いて枝葉花実である。「干支」で一本の草木、生命体になる。そこで言うまでもなく、干の方が大事であり、干があって初めて支がある。ところが干はやや難しい。支の方は誰にでもわかるし、民衆性がある。したがって干支の支の方はたいへん民衆に普及し、普及すればするほど、とんでもなく通俗化したことも当然です。けれども本来の事実はそうではなく、ちゃんと道理のあるものです。とくに干と支を組み合わせると、甲子(きのえ・ね)から癸亥(みずのと・い)までの六十通りがあるわけで、これは人間の存在や活動のよい考察材料となる。
本来の干支は、生命あるいはエネルギーの発生・成長・収蔵の循環過程を分類・約説した経験哲学ともいうべきものである。
即ち「干」の方は、もっぱら生命・エネルギーの内外対応の原理、つまりchallengeに対するresponseの原理を十種類に分類したものであり、「支」の方は、生命・細胞の分裂から次第に生体を組織・構成して成長し、やがて老衰して、ご破算になって、また元の細胞・核に還る - これを十二の範疇に分けたものである。
干支は、この干と支を組み合わせてできる六十の範疇に従って、時局の意義ならびに、これに対処する自覚や覚悟というものを、幾千年の歴史と体験に徴して帰納的に解明・啓示したものである。
- 「干支の活学」 安岡 正篤著 プレジデント社より -
1.陰陽思想(易経とは?)
易経では、この世界の大本にあるものを「太極」としている。陰陽の変化の根源であり、まだ陰にも陽にも分かれていない、混沌としたエネルギーである。
始めに太極をおき、そこから生じる事象をわかりやすく考えるために、便宜的に消極を陰、積極を陽として正反対の特徴に分けた。
天が陽で地が陰になる。同様に、一日を昼と夜に分けたとしたら、陽が昼で陰が夜。善と悪を陰陽に便宜的に分けたとしたら、善が陽で悪が陰。正邪しかり、動くと止まるも陰陽に分けたら陽は動く、陰は止まる。強弱も強が陽で弱が陰である。
【 陰 】 地 夜 悪 邪 止 弱 愚 柔 小 月 寒 女 子 息子 -
【 陽 】 天 昼 善 正 動 強 賢 剛 大 日 暑 男 親 母親 +
陰と陽は実際にはひとつの存在であり、ひとつの物や事象に、陰の面と陽の面がある。たとえば、手を太極として、手の甲を表(陽)とするならば、手の平は裏(陰)。一人の人間ならば、長所(陽)と短所(陰)、また、正(陽)と邪(陰)の両方を持ち合わせているという考え方である。
また、陰陽の判断は固定したものではなく、転化する。たとえば、母親と息子の場合、性別としてみた場合は、息子が陽で母親が陰。では親子関係でみた場合はというと、母親が陽で息子が陰になる。
一つのものを強い(陽)か弱い(陰)かに判断するとしても、視点や状況が変われば陰陽は転化する。
これら対立するもの陰陽が、対になって作用しあうことで全ての変化が生じる。夜があるから昼がある。静(陰)があるから動(陽)がある。季節は冬(陰)から夏(陽)へと向かい、夏(陽)はまた冬(陰)へと向かって、春夏秋冬が巡る。
陰陽は変化して循環するだけでなく、交ざり合うことで新たなものを生む進化をする。天から太陽の光や雨が大地に降り注ぎ、人間や動植物を育成し、男女が交わって、新しい生命が誕生する。これが『易経』の根底にある陰陽思想である。
- 「易経 一日一言」 竹村 亞希子著 致知出版社より -
2.陰陽五行説
五行の思想は、自然界は木(もく)・火(か)・土(ど)・金(ごん)・水(すい)の5つの要素で成り立っていると考え、五行の行という字は“巡る・循環する・行動する”の意で5つの要素が循環することで万物が生成され、自然界が構成されていると考えられ、東洋医学の根本的思想として現在まで継承されている。
・木 ~ 生繁っていくイメージ、肝臓
・火 ~ 燃えさかる火のイメージ、心臓
・土 ~ 養う、育てる、陶器を生むイメージ、脾臓
・金 ~ 光り、輝く、美しい、肺臓
・水 ~ つなげる、生命の元、どこでも行く、腎臓
大植隆
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