1、日本は、敗戦後に家族法を改正しましたが、その眼目は旧家族制度を解体し、夫婦単位の家庭を作ることでした。それまで相続は、家長制のもと戸主が家族財産を相続するものでした。これを改革し、家族制度を解体するために、配偶者と子供が均分相続する制度としました。
このため、遺言をもって、長男に全財産を相続させて家族制度を守ろうとしても、遺留分制度の適用により、家族制度への復帰を阻止する制度としました。
2、このように戦後に夫婦単位の核家族が作られてきました。
しかし、戦後85年を経て平成が終わろうとしている昨今、家族と相続の様相に大きな変化が生じています。
核家族となる中で、寿命が伸びで高齢者の介護の期間が長くなりました。戦前のように、家族の中で高齢者が隠居し余生の面倒を見てもらうという時代ではなくなりました。
このため、高齢者の面倒を誰が見るかという問題と高齢者の財産管理と財産の行く方が問題とある様相となりました。
そして、高齢者の財産を均分相続することが、良いのかどうか大きな問題となってきました。
何もしなければ、法定相続の均分相続になりますが、高齢者としては、均分相続が妥当といえない状況になってきました。
3、そこで、均分相続させない対策としては、遺言を残す方法があります。しかし、遺言には遺留分という大きな制約があります。
そもそも、この遺留分制度については、戦前の家族制度が解体し核家族になっている現代において、遺留分の制度的必要性がなくなってきております。核家族の実情においては、高齢者の面倒をみない者、親不幸者にまで、財産を残してやる必要がありません。しかし、遺留分制度では高齢者の面倒をみない親不孝者にまで、財産を与える結果になります。
このため、一定の者に財産をあげないという親の意思による遺言では、後に遺留分をもって相続争いが起きる結果になっています。また、遺言は、高齢者の介護問題について、全く関与できず、無力です。
しかも、遺言書は一方的に書き残すものですから、親の死んだ後に、相続争いになりやすいのです。
4、そこで、近時、家族信託が大いに注目されて普及しつつあります。
家族信託は、一方的に書き残す遺言と異なり、話し合いによる契約によって成立します。ですから、核家族が話し合って決めて、契約することができます。高齢者の親が、核家族化した子供達を集めて、親の面倒を誰が見るのか、介護の費用はどうするのか、相続になってら誰に遺産を渡すのか、核家族が話し合った結論を、信託契約にすることになります。 そうすると、親の面倒を見ないと言った長男は、親の面倒を長女に任せて、遺産はいらないとの話し合いになったりしますから、後に相続でもめることがなくなります。
ですので、核家族した現代においては、高齢者の介護と相続問題を話し合いにより解決し、それを信託契約にすることによって、高齢者問題と相続問題が解決できることになります。
私は、弁護士として、家族の高齢者の介護及び相続問題の話し合いが、もっと円滑に行われるべきだと考えており、実際の家族のお話し合いをサポートさせていただこうと志しております。
以上
太田勝久
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